■遅ればせながら、バレンタインぽい小話集です。。一応男女カプにこだわって…といっても小猫とユタ狐だけなんですけどね!(汗) 子熊もどうにかしたかったんですけどネタの神さま降りてきてくれないので無理でした…(ぇ)まぁそのうち気が向きましたら。とりあえずは小猫とユタ狐をどうぞv





















Assorted Valentine.





















『少しの勇気の前に少しのわがまま』(小饂飩×猫湖)



 「…出来そう……ですか…?」
「ちょっ!ちょっ、待って!待っ……もうすぐ出来るからもうすぐ!多分!!」
「…、あの……無理なら、いいですかも…」
「大丈夫だって!猫ちゃんは安心して見てな!!」
明らかにこめかみに汗を浮かべながら叫ぶ彼にそっとため息。やっぱり作戦の選択を間違えたかしら・と少し思う。
 彼の大きな左手が握っているのはいつも猫湖が抱いているぬいぐるみ、猫神さま。
 濃い茶色の腕、その根元の縫い目がゆるくなり、ほつれて、酷く不安定な腕になっていた。ぐらぐら、今にも千切れて取れてしまいそう。
 それで、小饂飩の右手は、小さな銀色の針など握っているわけである。
「でも意外だなー。猫ちゃん、こういうの得意かと思ったんだけど」
「…お裁縫は……苦手なんです」
猫湖は元々裁縫がそんなに得意でなかった。家で手伝いをやるにしても衣服関連はせいぜいアイロンをかける程度。手芸が嫌いなわけではなかったが、どちらかといえばビーズ遊びの方が好きだった。
 だが、だからといって、どう見ても裁縫好きには見えない彼にこの修繕を依頼したわけではない。
 本当は猫神さまの直しは二番目の目的だった。

 本当は、ただ、ささやかな言い訳にでもなるかと思って。

 けれどもう小一時間も四苦八苦している小饂飩を見ていると、さすがに気の毒になってきてしまった。自分の勇気が足りないために彼をこれだけ苦労させていると思うと、酷く申し訳なくなる。頼めば笑顔で快諾してくれた彼だけど。
「…あの……やっぱり、いいです。」
「イヤ大丈夫だってば見ててって…大体、猫神さま?だっけ。このままじゃダメじゃん!」
「だ、大丈夫ですかも…凪ちゃんとか……子津くんとか、に、頼めば」
「へ?」
せわしなく動いていた手がぴたりと止まり、明るい色合いの瞳がじっとこちらを見つめる。一体どうしたのかと戸惑いながらその目を見返していると、小饂飩ははたと我に返ったように目を丸くして、そしてまた声を張り上げた(このすぐ上がるテンションの高さだけはまだ少し苦手だ)。
「…って、猫ちゃん!ナギちゃんとやらはいいけど…ネヅって誰!!」
「は?」
「誰そいつ!?なんか聞いたことあるんだけど!何、クラスメイトとかそんなん!?野球部!?」
「…や、野球部……ですかも…。あの、黒撰と十二支の試合の時。最後のピッチャー…」
「……あ」
彼にとっては少し悔しい思い出。それを思い出してか一瞬瞳が翳ったけれど、すぐに気を取り直したように身を乗り出す。それは少しびくびくと、恐る恐るといった風に。本当に、どうしてしまったのかしら先輩は・などと思っていたら、
「で…その、ネヅ、は、どういう……」
「……。あ」
ああなんだ、そういうことか。なんだか不意に悟ってしまって、少しほっと肩をおろした。ゆっくり言う。
「あの…ネヅくん、おうちが、呉服屋さんなのかも…だから、野球部で一番お裁縫が上手いって評判なのかも。頼めば軽い修繕ぐらいすぐやってくれるから…また頼めばいいかな、と、思って」
きょと・と目を丸くして、じっと黙る。それから、ぶは・と派手に息を吐いた。どん・と後ろに体を傾けて、手を付いて。
「あ――びびった!知らねー…いや、あん時のピッチャーなら覚えてるけど、名前とか知らねー奴の名前が急に出てくっから…」
「から?」
「…え、あ、いやその…なんでもないなんでもないッ、大丈夫だって猫ちゃん、俺が絶好調に直してやっから!」
「……はぃ。」
少し微笑って、こくりと頷く。やっぱりまだ申し訳ない気持ちは消えないけれど。
 こんな自分の一言一言、これだけ必死で聴いてくれることが嬉しいから。
 こんな自分のために、これだけ一生懸命になってくれることが嬉しいから。

 もう少しだけ、甘えていてもいいですか。
 きっと最後には、その猫神さまの腕が直ったら、そしたら私も勇気を出すから。


――だから、頑張って下さいね。


 そっと心の中で呟いて、猫湖は背後にこっそり置いてある赤いリボンの小さな包みを後ろ手にきゅっと握った。







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▲なんだか猫神さまの修理一生懸命してる小饂飩が浮かんで、不安そうに見てる猫湖嬢が浮かんで、あっお礼にチョコレートってことでバレンタインになるんじゃない!?とか勇んだらこんなん出来ました(ぇぇぇ) 猫湖嬢は猫神さまちゃんと直してもらえたら「お礼です」って言ってホントは元々買ってあったチョコ渡すつもりだったのです。照れ隠し!あー清純だな小猫は!!(何) あ、子津にプチ焼き餅のくだりは正直思いついたので書いてみただけです。実家呉服屋設定はおいしいなあしかし……(言ってろ)
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『多分あなた以外じゃありえない』(由太郎×夜摩狐)



 「あれ、ねーちゃん。その紙袋なに?」
「……さすが目ざといですわね」
「目はいいけど目ざといとか言われたこた無ェよ?で、何ってば、それ」
「…チョコよ、チョコ」
「ちょこ?…お菓子か!!」
ぱっと一瞬にして喜色満面になった少年に、はぁ・とため息。やっぱり食べ物(と、野球)の話になると反応が違うわね・などと思いながら。
「そうよ。チョコレート」
「喰っていい!?」
「だめ」
ぴしゃりと言うと、思い切り残念そうに顔をしかめて、なんでー・と訊く。全くもう本当にこの子は中学生なのかしら。
「…明後日、なんの日だか知っている?」
「あさって?…んー……豆まきはもう終わったよな」
「バレンタインですわよ、バレンタイン」
「ばれ……、…なにって?」
「バレンタイン!知りませんの?女の人から、殿方にチョコレートを差し上げる日ですわ」
「そんなんあんのかー!…あ、そういやこの季節、やたら女子からチョコ貰ったことあったかも!!」
「…あなた今までそのチョコをなんだと思ってましたの」
「不思議だけど貰えるもんは嬉しいし貰っとこうとか思ってた」
「……まぁ、特にモメ事も無かったってことは、義理がほとんどだったのよね…不幸中の幸いかしら」
「何ぶつぶつ言ってんだ?ていうか、じゃ、ねーちゃん、そんなにいっぱいチョコやりたい奴いんのか!?」
「個人的にではありませんわ。そりゃあ素敵だと思ってる殿方ぐらいたくさんいらっしゃいますけどね…これは部活で、部員の方にお配りするチョコなのよ。」
「あ、部活かぁ…」
「だから由太郎は駄目」
「えー!」
「えー、って言われてもねぇ」
「けち!!」
「あんまり言うと殴りますわよ」
「…ごめんなさい」
口を尖らせながら、渋々といったふうに一応引き下がった由太郎を、ちら・と横目で見てみる。まだその顔は残念そうで、というかむしろ哀しげ、と言ってもいいぐらいで。
 夜摩狐はもう一度、ため息をついた。
「…ちょっと待ってなさい、由太郎」
「へ?」
きょとんとした由太郎に背を向け、壁際に置いていた鞄を引き寄せる。そうして暫くごそごそと中を漁っていたかと思うと、
「ほら」
「え」
しゅっと中の箱をスライドさせて中身を由太郎に晒す。それはつやつやと光る小さな卵のようなアーモンドチョコレート。
「わー!チョコだ!!これは貰っていーの!?」
「構いませんわよ。今日学校で、鶫…マネージャー仲間にもらったものですから」
元々こういう細かいお菓子を好んで買ったり食べたりするタチではない。由太郎はなんでも好きに食べそうだし、喜んで食べられる方がチョコのほうでも嬉しいかなどと思って差し出したのだ。案の定、由太郎は顔いっぱいに笑ってありがとう・と言った。その笑顔は出逢った頃と少しも変わらない、何度見ても夜摩狐は一瞬どきりとして固まってしまう程に鮮やかな。
「…全く、敵いませんわね」
「これ結構まだいっぱいあるよ。ねーちゃんも一緒に食べよー」
くいくいと袖を引っ張り言う声に、はいはいと軽く返しながら箱へと手を伸ばす。由太郎は一旦言い出したら滅多に引かない。
 なんだか母親にでもなった気分だ・と少々情けないような複雑な思いに駆られたが、隣の由太郎はまず間違いなくそんな夜摩狐の胸中など気付いていない顔でぱくぱくチョコレートを口に放り込んでいた。
「うまいなー。俺んち、こういうお菓子滅多に買わねーし」
「あら、そうなの」
「腹減ったんなら飯を食え!ってね」
「いいことですわね」
「そーか?」
「ええ。少なくとも体には良いでしょう」
「でもやっぱ俺、たまにはこういうのも食いてぇな」
ふとチョコレートをつまむ手が止まる。その顔が少しだけ寂しそうに見えた気がして、おや、と思い、夜摩狐もチョコレートを口に運びかけていた手を止めた。
「…まぁ、たまに、でいいんだけど。おにぎりとかも大好きだし!」
すぐにぱっと明るく笑ったけれど、先の一瞬の顔に、もしかしたら・と思う。もしかしたら、時に、彼でも。
 彼が野球を大好きだと言うその声に笑顔に偽りは無い。それはきっと確かだろう。
 でも、嘘ではなくても、ほんの時々ぐらいは。

 『普通』の子供でいる周りの人々が、羨ましい・と。

 思うこともあったのかもしれない。そう、不意に、思った。


 「……あれ?あ、夜摩狐ねーちゃん!それ最後の一個!!」
「は?」
唐突な大声にはっと我に返ると、由太郎がびっ・と自分のほうを指差していた。その先には、さっきの彼の言葉に止めてしまった手とその手の先が掴む、丸いチョコレート。
 気付けば箱の中はもうカラになっていたらしい。
「えー…いいなー……」
「…あなたもうたくさん食べたでしょうに」
「最後の一個って特別じゃん!」
「大差無いと思いますけどね。いいわ、あげる」
「え、マジで!?」
「元々あなたにあげると言ったチョコですし」
苦笑混じりに言って、ほら・とチョコレートを差し出す。由太郎はやっぱり嬉しそうにありがとうと言って、そして、

 ぱくっ。

手を使うことなく、チョコレートを口に入れた。それを差し出していた夜摩狐の細い指先ごと。
 まぁ要するにかぷりと喰いついたのだけど。
「――…っ!?」
唐突な由太郎の行動に一瞬固まって、それからすぐさま手と体を引く。一方由太郎はけろりとして、
「やっぱうまいな〜」
などとのたまっていた。多分他意はない。だからタチが悪い。
「ゆ、ゆ、ゆたろ…っ何してますのあなたは!!」
「え、だって食べていいって言ったじゃん」
「そっちじゃなくて!誰がそのまま食いつけって言いました!?」
「へ?」
「まず手で受け取ってから自分で口に入れなさいっ!」
「えー、だってちょうど近かったし…にいちゃんとかも物くれるときはこうだぞ」
「え゛」
「にいちゃんは俺が食いつく前にぽいって投げて、さっさと手ぇ引くけどね」
「……」
それはなんだか犬に骨をやる図と似ている気がするのは気のせいか。
「…それ、先に言って頂戴……。」
「んー、でもホントにうまいぞ、ありがとなねーちゃん!」
ころころ笑う由太郎を尻目に、今日一番深いため息をついた。
 ぱくりとチョコレートごと咥えられた指先に、生温い唇の感覚がまだ残っている。
 少し熱い気のする頬と、ばくばくいっている胸を抱えて。

 前言撤回、母親気分だなんて、母親はこんな気持ちは絶対味わわない。

 そう思いながら、もし来年の今頃も彼との付き合いが続いていた時には、もう少しまともなチョコレートの一つも用意してあげようか、とも思った。









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▲超青春ぽい小猫から一点、こちらは思い切り趣味に走ってますね(ぇ)、ユタ狐です。でもユタ狐のイメージはこんなんなんだ…ユタは本気で他意なしににこにこーってしてくっついていくんです。夜摩狐さんは時々迷惑ですがなんだかんだ可愛いし悪意も下心も無いんで暴力に訴えるわけにもいかず結局なぁなぁで一緒にいます(笑) 書きたかったところは指パクだけだったんですがね…いつの間に小猫より長くなったのか……(遠い目) 「母親みたい」なくだりは書いてて私が思ったので入れてみました。ホントに夜摩狐嬢お母さんみたいだよ…!気付けばいつも説教させてるよごめんね!(ぉぃ)
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